2008.03.21 Friday
249話 『スーパーお母さん』
あれは小学校1年生の時だった…
僕たちの小さい頃は学校側の配慮があまり無く、授業参観は父親参観と母親参観に別れていた。 それは僕にとってツライ一日だった。 父親参観日だ。 僕の両親は僕が生まれてからすぐ離婚し、僕は母と一緒に暮らしていた。 僕は先生から配られた『父親参観日のお知らせ』を母に見せずにそのままランドセルにしまっておいた。 僕には父がいなかったので、母に見せてもムダだと小さいながらに思ったことを覚えている。 「明日は学校行きたくないなぁ…」 と憂鬱な気分で布団に入った。 父親参観の日、みんなの父親たちがぞろぞろと教室に入ってきた。 当然僕の父はいない。 授業が半分くらい進んだところで、教室の後ろのドアが『ガラガラ』と開いた。 みんなが注目しているその先には僕の母が立っていた。 母の格好は男物のスーツにネクタイを締め、長くてキレイだった髪は短くバッサリ切ってあって、本当に男みたいだった。 みんながクスクス笑い始めた。 そのクスクス笑いが爆笑に変わるまでに時間はかからなかった。 みんな僕の母を見て 「オトコオンナだ!」「オトコオンナだ!」 と指を差して笑っている。 僕は恥ずかしくて恥ずかしくて、真っ赤な顔で母を睨んだ。 先生が「みんな静かにしなさい!」と言っても、笑いは止むことはなかった。 その時だった。 「違うよ!」 そう言ったのはクラスでも目立たない男の子で、いつも無口で勉強ばかりしているツトムくんだった。 「違うよ!タケルくんのお母さんはオトコオンナなんかじゃないよ!」 「タケルくんにはお父さんがいないから、お母さんがお父さんにもなれるスーパーお母さんだよ!」 その一言でみんなの笑いは止まりました。 誰かが言いました。 「おぉ!!スゲェ!!スーパーお母さんだ!!」 笑いは拍手に変わりました。 先生やみんなの父親たちも拍手で僕の母を迎えました。 でも僕の恥ずかしさは修まりませんでした。 その日の夜、僕は母に 「なんであんな男みたいなみっともない格好で来たんだよ!みんなの笑い物になったじゃないか!」 母はただ「ごめんね…」と涙を流しながら僕に謝っていました。 ----------40年後(現在)---------- 母の死に顔はとても穏やかに見える。 女手一つで僕を育ててきた母が、今は無言で棺桶の中に横たわっている。 棺桶の蓋が閉められる時、僕は言った。 「あの時、みっともないなんて言ってごめんな…」 「今までありがとうお母さん」 「そしてありがとう、僕のお父さん…」 そう言った後、棺桶の中の母が少しだけ笑ったように見えた。 僕はいつまでもいつまでも、母に愛情を注がれた分だけ涙を流した…。 --------------------------------------------------- 全部読みたい人は思想解剖で全話見られます(・o・) --------------------------------------------------- |

